ブロードウェイの人気ミュージカル『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』について紹介します。
ムーランルージュとは
『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』は、バズ・ラーマン監督の映画「ムーラン・ルージュ」を基に作られたジュークボックス・ミュージカルです。
ジュークボックス・ミュージカルとは、その作品専用に作られた曲ではなく、他の既存の楽曲を劇の様式に合わせて使用するミュージカルのこと。伝統的なブロードウェイのミュージカルとは少し毛色が異なりますが、初めて作品を見る方でも聞き覚えるのある曲がたくさん登場するので楽しみやすい作品になっています。
本作は、現在もパリのモンマルトルに実在するキャバレー「ムーラン・ルージュ」を舞台に、裕福な家庭で育った純粋無垢な青年クリスチャンと、ムーラン・ルージュでNo1の踊り子サティーンの恋と悲劇の物語である。
このミュージカルはとにかく派手でエネルギッシュな作品です。会場に一歩足を踏み入れると、ナイトクラブを連想させる妖艶な紅に染まった空間、舞台や天井には無数のきらびやかな電飾、舞台の右上には巨大な青いゾウ、左上には本家ムーラン・ルージュの象徴である赤い風車(ムーラン・ルージュはフランス語で『赤い風車』の意味)があり、ニューヨークの街並みから19世紀末パリの夜の世界へ誘われます。
ムーラン・ルージュの代名詞である「フレンチ・カンカン」を踊るシーンでは、興行主ジドラー役の方が観客席に向かって手拍子を煽ってきます。観客側もただ座って見るだけではなく、ムーラン・ルージュというナイトクラブを実際に訪れたゲストのように、キャストたちと一緒になって舞台を盛り上げます。
派手で綺羅びやかな世界観とパワフルでエネルギッシュな舞台を、キャストとゲストが一体になって盛り上がる熱狂のステージは、終演後もその興奮がしばらく止むことはないでしょう。
「せっかくニューヨークに来たから、ブロードウェイでミュージカルを見たい」と思ったら、その選択肢の1つに「ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル」を選んでみてはいかがでしょうか。
あらすじ
舞台は1899年のパリ。裕福な家庭で育った作家志望の青年クリスチャンは、ボヘミアン(移動型民族)な生き方に憧れ、花の都パリのモンマルトルにやって来る。愛と自由の物語を書こうと意気込むも、恋愛経験がない純粋無垢な彼はその物語を書けなかった。ある日、ナイトクラブ『ムーラン・ルージュ』で働く者たちと出会います。彼らは舞台で流す曲がないと困っており、クリスチャンは舞台に合う曲を即興で披露。気に入られたクリスチャンは『ムーラン・ルージュ』の作家として働くことになります。
一方、ムーラン・ルージュは経営に行き詰まっており、経営者のジドラーは資産家のデューク伯爵に資金援助をしてもらうため、クラブNo1の踊り子であるサティーンに彼を誘惑するよう持ちかける。経営状況が厳しいことも知っていた彼女は、自分が上流階級のデュークと結ばれることで、劇場で働く仲間が救われるならと思い、ジドラーの提案を受け入れます。
サティーンは「象の部屋」と呼ばれる部屋でデューク伯爵と2人きりで会う予定だったが、手違いで現れたクリスチャンをデューク伯爵と勘違いし彼を誘ってしまう。クリスチャンは自分が伯爵ではなく雇われた作家であることを告白しサティーンは困惑する。しかし、彼が作る詩を聴いているうちに彼女は恋に落ちます。二人は周囲にそのことを隠しながら愛し合いますが、クラブの経営を立て直す為にジューク伯爵とサティーンの愛人関係も続きます。
クリスチャンとサティーンの関係に気づいたデュークは、二人の関係を引き裂こうとします。劇場の存続や働く仲間たちの為に、サティーンは一方的にクリスチャンと別れる。しかし、サティーンがクリスチャンを想い続けていることに気づいたデュークは態度が豹変し、彼女を暴力的に支配しようとする。
サティーンはデュークと支配的な関係で暮らすことになるが、食事をしている時に咳き込み、結核を患っていることが発覚する。自らの命が長くないことを知らされるが、クリスチャンにはそのことを秘密にしていた。
そして、クリスチャンが手掛けた舞台が上演されることになります。彼女は女優としてクリスチャンが手掛けた舞台を世に広めたいと願い、病に苦しみながらも舞台に立ち、クリスチャンも役者として同じ舞台に立つ。しかし、サティーンは病によって舞台の上で倒れる。サティーンはクリスチャンにこれまでの出来事や結核を患っていたことなどの真実と、彼への愛を告げ、クリスチャンの胸の中で息を引き取りミュージカルは終了となる。
物語自体はここで終わりますが、最後にアンコールとしてキャストが総出で出演し、フレンチ・カンカンなど劇中で使用された曲と共に挨拶とパフォーマンスが繰り広げられる。観客席は総立ちのスタンディングオペレーションとなり、拍手大喝采の熱狂に包まれて舞台は終わる。
アクセス
劇場名 | Al Hirschfeld Theater |
住所 | 302 W 45th St, NewYork, NY |
最寄り駅 | 42st Times Squre駅 |
HP | 公式サイト |
ドレスコード
ドレスコードは基本的にありません。
パリ本家のムーラン・ルージュは、フォーマルまたはエレガント相当のドレスコード規定がありますが、ニューヨーク・ブロードウェイのミュージカルでは、カジュアルな服装でも問題ありません。
年齢制限
明確な年齢制限は設けられていませんが、12歳以上が推奨とされています。
パリ本家のムーラン・ルージュ『Féerie』のナイトショーでは、ヌードダンサーによるパフォーマンスがありますが、ブロードウェイのミュージカルは、妖艶な衣装や演出はあるものの、本家のように直接的な演出はないので、その点は心配しなくても良いと思います。
チケット購入方法
公式サイト
『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』のチケットは公式サイトから購入できます。
公式サイト右上の『GET TICKET』をクリックすると、公演カレンダーが表示されます。
希望する日時をクリックすると、『SEAT GEEK』というチケットサイトに移行するので、希望のシートを選択して決済をします。Eメールアドレスと電話番号の入力を求めれるので、そちらでeチケットを受け取ります。
SEAT GEEKには専用アプリがあります。アカウント登録をした上で購入すると、アプリでチケットの管理や提示ができるようになります。
公演当日は劇場の前でチケットのQRコードを提示して入場します。
座席配置
ムーラン・ルージュ!ザ・ニュージカルが上演される『アル・ヒルシュフェルト劇場(AI Hirschfeld Theatr)』は2階建ての劇場となっており、ブロードウェイの中では小さい劇場になります。
2階のメザニン(Mezzanine)席が、1階オーケストラ(Orchestra)席の真ん中より前の部分まであるので、1階のリア(後方)席だと、舞台の上が見切れてしまいます。
各座席から見た眺めの写真を次章でレポートしているので、席選びの参考にしてください。
劇場レポート
アル・ヒルシュフェルト劇場
ムーラン・ルージュは、タイムズスクエアから徒歩5分ほどの場所にある『アル・ヒルシュフェルト劇場』で上演されます。GoogleMapで確認
開演30分前くらいの様子です。
屋根に記された「TRUST(真実)BEAUTY(美しさ)FREEDOM(自由)LOVE(愛)」は、このミュージカルのテーマです。
入場の列に並びます。
チケットを準備しておきましょう。
入場時には手荷物チェックがあります。
飲み物などは持って入れました。
エントランス
劇場内のエントランス。
1924年に創設された歴史のある古い劇場で、広くはありませんが重厚感がある作りになっています。
入口にはギフトショップがあります。
ムーラン・ルージュのミュージカルCDなども販売されていました。
見落としがちなのが天井の巨大なドーム。
アメリカ唯一のビザンティン様式の劇場であり、非常に希少な建築物でもあります。
2階エントランスからの眺め。クラシカルな照明も雰囲気を演出します。
左側の回廊にはアル・ハーシュフェルドの作品ギャラリーがあります。
回廊には絵が並び、美術館のようになっている。
開演前や休憩時間などにゆっくり見てみましょう。
1階の奥にはバーがあり、アルコールやドリンクを注文できます。
いよいよ劇場内に入ります。
ニューヨークの劇場は開演前にキャストの方がステージでパフォーマンスをしているため撮影は禁止。記念撮影は途中の休憩時間か、終演後に行いましょう。
劇場内
ムーラン・ルージュの見どころの1つが、ナイトクラブを連想させる妖艶な赤色に染まったステージ。
舞台の左上にはシンボルである赤い風車があります。
ムーラン・ルージュとはフランス語で『赤い風車』を意味します。
パリのモンマルトルにある本家ムーラン・ルージュの建物にも同様の赤い風車があるので、本家に訪れたことがある人はピンとくるでしょう。
ステージには赤いネオンで描かれた「MOULIN ROUGE」の文字。
開演すると文字が上に昇っていきます。
ステージには何重にも重なったハート型の舞台セット。
舞台の右上には『青い象』
本作のヒロインであるサティーンは、劇場内に「象の部屋」と呼ばれる寝室付きの部屋を与えられている。英語の慣用句で「Elephant in the room(部屋の中の象)」という言葉があり「多くの人は気づいていても、見て見ぬふりをする」という意味です。
本編で周囲に隠れて恋をするサティーンとクリスチャンの掛け合いが行われる場所でもある。また劇中で直接的な表現はされないが、高級娼婦であるサティーンが綺麗事だけではない大人の世界で生きている人物であることを間接的に表現している。
この劇場は小さめなので、1階『オーケストラ』のフロント・リア席には2階の天井部分が重なる。
今回は1階『オーケストラ』・P列(ミッド・センター)の席でした。
上に天井が被っていますが、舞台の上がギリギリ見切れない位置。サティーンが天井から椅子に座って降りてくるシーンも見きれずに見えました。
P列センターから左側を見た時の眺め。
P列センターから右側を見た時の眺め。
こちらは1階『オーケストラ』のリア(後方)席からの眺め。
ステージ自体は見えますが、背景も含めて絵画のようにステージ全体を見ることは難しい。
2階『メザニン』のフロント(前方)右後方からの眺め。
ムーラン・ルージュには正面舞台の手前もステージがあるのですが、そこは若干見切れてしまいそう。前方部分が見えないことで劇の内容に支障が出ることはない印象でした。
2階『メザニン』のセンターリア(後方)席からの眺め。
舞台からの距離はありますが、見晴らしは結構良いように感じました。
メザニンの1列目・2列目の眺望はかなり良さそうです。
2階『メザニン』のフロント(前方)左側席からの眺め。
こちらも前方の突き出たステージ部分が見切れることを除けば見晴らしは良い。
2階『メザニン』のリア(後方)左側席からの眺め。
ステージからの距離はありますが、1階オーケストラの後方席よりはこっちの方が見やすそう。
まとめ
『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』は、2018年のボストン公演を皮切りに、2019年からニューヨーク・ブロードウェイでの公演が始まり、現在も人気ミュージカルの一つとなっています。
この作品のテーマは「真実、美しさ、自由、愛」
裕福な家庭で育った純粋無垢な青年クリスチャン、大人の世界を生きるサティーン、劇場を存続させたいジドラー、お金の力で全てを支配しようとするデューク。それぞれの人物ごとに、本作のテーマである「真実、美しさ、自由、愛」の物語が描かています。派手な演出とヒット曲の裏に散りばめられたテーマ性にも注目して観劇して欲しい。
劇場に足を踏み入れた瞬間から、19世紀末のパリのナイトクラブ『ムーラン・ルージュ』の妖艶でゴージャスな世界観に引き込まれます。物語は良い意味で俗世的であり、伝統的なブロードウェイのミュージカルとは少し毛色が異なりますが、圧倒的なパフォーマンスとヒット曲の数々、観客も巻き込み、キャストとゲストが一体になる熱狂のステージは、ニューヨークのブロードウェイでの思い出に深く刻まれることでしょう。
笑いあり、涙ありの感動の舞台『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』を本場ニューヨークのブロードウェイでぜひ楽しんでみてください。